白いひもにしか見えない『ヒモワタカイガラムシ』

ヒモワタカイガラムシ
草
レア度  
すばしっこい度 
危険度  
飼いたい度  

ヒモワタカイガラムシ(Takahasia japonica)

ヒモワタカイガラムシ
学名 Takahasia japonica
種類 カイガラムシ科
分布地域 本州・四国・九州
活動時期 4~6月
エサ クワ、ケヤキ、カエデ、ヤナギ、エノキ、柑橘類などの木
大きさ 3~6ミリぐらい

なんだこれは!!

と二度見したくなる白いヒモのようなものが、木についているのが『ヒモワタカイガラムシ』です。

正直生き物に見えないので、

「何が付いてるんだろう?」ぐらいに思うかもしれません。

まさかこれが生き物とは…

ヒモワタカイガラムシは毒や害はあるのか

ヒモワタカイガラムシ

見た目から、なんだかわからないものなので触ったら危ない!!

と思うかもしれませんが、毒はありませんのでご安心を。

ただ、カイガラムシの種類は、植物を育てている人にとっては養分を吸ってしまうので害虫として扱われています。

カイガラムシによってつく木が違うのですが、ヒモワタカイガラムシは、クワ、ケヤキ、カエデ、ヤナギ、エノキ、ハンノキ、スモモ、ネム、柑橘類などについて養分を吸います。

なので、この種類を育てている人にとっては、ヒモワタカイガラムシが大量に発生した場合、養分をたくさん吸われてしますので木の成長や実の付きが変わるなどする被害が出る可能性もあります。

さらに、カイガラムシ全般の問題として、排泄物や分泌液が原因となって、すす病などの病気を引き起こして酷い時には木が枯れてしまうこともあります。

なので、ヒモワタカイガラムシの好きな木を育てている人にとっては天敵のような存在になるかもしれません。

白いわたのようなものは何??

ヒモワタカイガラムシの白いわたの正体

白くヒモのようなワタのようなものは、ヒモワタカイガラムシの名前の由来にもなっていますけど、見ると実に不思議な物体ですよね…

それもそのはずで、これはヒモワタカイガラムシの本体とは別のもので卵を覆う卵嚢(らんのう)というものだからです。

簡単に言うと、白いワタのヒモの中に卵がいっぱい詰まってるものです。

載せてある写真をよく見ていただくと、小さな黄色っぽい小さな粒がたくさんあるのが分かりますかね?

かなりギッシリ詰まっているので、これが孵化するとヒモの長さにもよりますけど3000個以上の数があると言われています。

凄まじい方法をとって繁殖している面白い生物ですね!!
このヒモは、触ってみると名前の通りワタのようですけど、卵を守るためのものだけあって回りはロウ状の物質でコーティングしているので結構しっかりとしています。

ヒモワタカイガラムシの情報

ヒモワタカイガラムシの分布

日本全国にいるわけではなく、本州、四国、九州に生息しています。

ある意味では、限らた地域でしか見れない変わった光景を楽しむことができるわけです。

カイガラムシの種類は、国内でも400種類以上いるといわれているので、世界的にもよく知らていますが、このヒモワタカイガラムシは学名に「japonica」が付けられている日本の固有種になるカイガラムシになりますが、中国や朝鮮半島などにも分布しているようです。

ヒモワタカイガラムシの特徴

名前が明らかにヒモとワタのカイガラムシなのですが、本体は貝のような殻をもった虫になります。

ヒモの先端にあるパッと見は、何かのフタのようにも見えるのが体です。

ヒモワタカイガラムシの横からみた姿

殻は、黒っぽいマダラ模様になっています。
決して硬い殻ではないので、簡単に割れてしまう繊細さがあります。

見た目は完全に貝ですけど、ちゃんと触覚や脚もちゃんとあるのですが外からは見えない構造になっています。

なので、もはや貝でしかないのでは??
と思ってしまうのが一番の特徴ですね。

貝にそっくりですけど、木の栄養分を吸って生活するスタイルなどが関係して、ヒモワタカイガラムシは見た目から想像できないですけど、種類としてカメムシ目(もく)に入っています。

ヒモワタカイガラムシの住処

基本的に木の枝についたまま生活しています。

大きく移動することなく、木に寄生するように生活しているので、生涯を一度ついた木を住処としています。

ヒモワタカイガラムシの生態

ヒモワタカイガラムシの情報

インパクトの強い白いヒモ状の卵嚢は、5月頃に作りながら卵を産みます。
そして、6月頃に孵化して幼虫が出てきます。

3000個以上ほどの卵からワッと孵化して、葉の裏に身を隠しながらやはり養分を吸って生活します。

この大量の卵は、1年に何度も産むのではなく1回だけ産卵です。

秋から冬が近づくころに、栄養を吸っていた葉も落ちてしまうので枝の方へと引っ越しします。

そして、幼虫のまま寒い冬を越す生活をしています。

ヒモワタカイガラムシの被害がでて困った時

大量発生してしまい、大事に育てている植物が深刻な被害を受けてしまうこともあると思います。

可哀そうなのであまりお勧めしたくないですが、そんな時は特にこの白いヒモの卵を産む時期に直接捕まえて捕殺すれば数を増えるのを抑えることができます。

とりあえず薬を撒けば大丈夫というのは間違いで、ヒモワタカイガラムシは貝のような殻があるので薬が効きにくい特性があります。

なので、まずは増えないように卵と親が目立つ5月頃に捕まえて、生まれたての殻のない6月の時期にオルトラン水和剤やアクテリック乳剤といったメジャーな薬で対処するのが、最小限に他の生き物や植物に負担をかけないと思います。

可能なら駆除しないで済むのが一番ですけど、なにぶん身を守る強さと大量の卵を産む生き物ですからね。

ヒモワタカイガラムシは生き物として、凄く面白いスタイルの生き物ですので、被害がない限りはぜひ楽しんで観察していただければと思います。